Xilinx(ザイリンクス)は、2022年2月14日にAMDによる買収が完了し、現在は独立した上場企業ではありません。旧NASDAQ証券コード「XLNX」は上場廃止となり、Xilinxが築いたFPGA、Adaptive SoC、開発ソフトウェアはAMDのAdaptive Computing製品群として継続しています。
Xilinxは、製造後に回路構成を書き換えられるFPGAを商用化した先駆的企業です。現在もArtix、Kintex、Virtex、Spartan、Zynq、Versalなどの名称はAMD製品として使われています。
Xilinxの現在の位置づけ
| 旧会社名 | Xilinx, Inc.(ザイリンクス) |
|---|---|
| 現在 | AMDのAdaptive Computing製品・事業 |
| 買収完了日 | 2022年2月14日 |
| 旧本社 | 米国カリフォルニア州サンノゼ |
| 旧証券コード | NASDAQ: XLNX(上場廃止) |
| 主な製品 | FPGA、Zynq Adaptive SoC、Versal Adaptive SoC |
| 開発環境 | Vivado、Vitis |
| 主な市場 | データセンター、通信、車載、産業、航空宇宙・防衛 |
AMDはCPUとGPUに、XilinxのFPGA、Adaptive SoC、AI Engine、ソフトウェア技術を組み合わせました。Xilinxという会社は消滅しましたが、製品名や商標、一部の製品上のロゴは移行期間中も残っています。
AMDがXilinxを買収した理由
AMDは2020年10月に買収計画を発表し、2022年2月に全株式交換で取引を完了しました。狙いは、AMDのCPU・GPUとXilinxの適応型コンピューティングを組み合わせ、クラウドからエッジ、組み込み機器まで対応範囲を広げることです。
- CPU:汎用処理と制御に強い
- GPU:並列演算とAI学習・推論に強い
- FPGA:用途に応じてハードウェア回路を再構成できる
- Adaptive SoC:CPU、プログラマブルロジック、専用演算器を1チップに統合
買収によりXilinxの顧客基盤だった通信、産業、車載、航空宇宙・防衛市場がAMDに加わりました。一方で、Xilinx単独の売上高や利益、株価を追う意味はなくなり、現在はAMDのEmbeddedセグメントなどを確認する必要があります。
FPGAとは何か
FPGAはField Programmable Gate Arrayの略で、出荷後でもユーザーが論理回路を書き換えられる半導体です。CPUのように命令を順番に実行するだけでなく、処理内容に合わせた並列回路を構成できます。
| 種類 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| CPU | 汎用性が高くソフトウェア開発が容易 | OS、アプリケーション、制御 |
| GPU | 多数の演算器による並列処理 | 画像処理、AI、科学技術計算 |
| ASIC | 特定用途向けに固定した専用回路 | 大量生産、最高効率が必要な処理 |
| FPGA | 回路を再構成でき、低遅延処理が可能 | 通信、産業制御、試作、規格変更への対応 |
FPGAはASICより柔軟で、CPUやGPUより用途に合わせたデータ経路を作りやすい点が強みです。ただし設計にはハードウェア記述言語やタイミング設計の知識が必要で、開発難易度と単価は用途によって課題になります。
現在のAMD FPGA製品
| 製品群 | 位置づけ | 主な用途 |
|---|---|---|
| Spartan | 低コスト・高I/O | 産業機器、接続、制御、映像 |
| Artix | 低消費電力・コスト最適化 | 画像処理、通信、組み込み |
| Kintex | 性能とコストのバランス | 通信、放送、産業、データ処理 |
| Virtex | 大規模・高性能 | データセンター、ネットワーク、航空宇宙 |
AMDは7 Series、UltraScale、UltraScale+を継続しながら、Spartan UltraScale+やKintex UltraScale+ Gen 2なども展開しています。長期供給が重視される組み込み市場向けに、7 Seriesは2040年、UltraScale+は2045年までの製品寿命方針を示しています。
出典:AMD FPGA製品一覧
Zynq:CPUとFPGAを1チップに統合
ZynqはArm CPUとプログラマブルロジックを1つのチップに統合した製品です。CPUでOSや制御ソフトを動かし、FPGA部分で画像処理、センサー入力、モーター制御などを低遅延で処理できます。
- Zynq 7000:Arm Cortex-A9と7 Seriesプログラマブルロジック
- Zynq UltraScale+ MPSoC:64ビットArm CPU、リアルタイムCPU、映像機能などを統合
- Zynq UltraScale+ RFSoC:高速RF-ADC・RF-DACを統合し、無線・計測向けに対応
ZynqはADAS、産業ロボット、医療画像、通信基地局など、ソフトウェア制御と専用ハードウェア処理の両方が必要な分野で使われます。
Versal Adaptive SoC:Xilinx技術の中核
Versalは、プログラマブルロジック、Arm CPU、DSP、AI Engine、Network on Chip、各種ハードIPを組み合わせた異種混載型のAdaptive SoCです。従来型FPGAより多くの専用機能を統合し、システム全体の処理を1チップにまとめることを狙っています。
- Versal Prime:幅広い組み込み・通信用途
- Versal Premium:高速ネットワーク、PCIe、CXLなど
- Versal AI Edge:車載・産業エッジでのAI推論
- Versal AI Core:AI推論、DSP、5G・通信処理
- Versal HBM:大容量・高帯域メモリーを必要とする処理
- Versal RF:RFデータコンバーターを統合した無線・計測用途
現在はPrime、Premium、AI EdgeのGen 2製品も加わり、CPU性能、DDR5、PCIe Gen6、CXL、エッジAIなどへの対応を拡大しています。
VivadoとVitisによる開発
再構成可能な半導体では、チップだけでなく開発ツールとIP資産が重要です。Xilinxが育てた開発環境もAMDブランドで継続しています。
- Vivado Design Suite:FPGA・Adaptive SoCの論理合成、配置配線、タイミング解析、デバッグ
- Vitis:組み込みソフトウェア、アクセラレーション、AI Engineを含むシステム開発
- IP・リファレンス設計:通信、メモリー、映像、AIなどの開発期間を短縮
AMDはCPU・GPU向けソフトウェアとAdaptive Computingツールの連携を進めています。買収の価値は、FPGA製品そのものだけでなく、長年蓄積された設計ツール、IP、開発者コミュニティにもあります。
主な市場と用途
- データセンター:ネットワーク、ストレージ、SmartNIC、アクセラレーション
- 通信:5G・6G基地局、光通信、パケット処理
- 車載:ADAS、カメラ・LiDAR処理、車載ネットワーク
- 産業:ロボット、マシンビジョン、モーター制御
- 航空宇宙・防衛:レーダー、信号処理、耐放射線デバイス
- 放送・医療:高解像度映像、超音波・画像処理
2025年・2026年の事業動向
| 期間 | AMD Embeddedセグメント売上高 | 動向 |
|---|---|---|
| 2025年通期 | 35億ドル | 前年比3%減。最終市場の需要は分野ごとにばらつき |
| 2026年第1四半期 | 8億7,300万ドル | 前年同期比6%増。複数市場で需要が改善 |
Embeddedセグメントには旧Xilinx製品以外も含まれるため、この数字をXilinx製品だけの売上高とは解釈できません。ただし、AMD買収後のAdaptive Computing事業の需要を見る代表的な指標です。
出典:AMD 2025年Form 10-K、AMD 2026年第1四半期決算
主な競合企業
競争軸はロジック容量や処理性能だけではありません。消費電力、I/O、開発ツール、IP、供給期間、セキュリティ、AI対応などを含めたシステム全体で比較されます。
Xilinx/AMD Adaptive Computingの強みと課題
| 強み | 課題 |
|---|---|
| FPGA市場で築いた製品・IP・開発者基盤 | FPGA設計の学習コストと開発難易度 |
| FPGAからZynq、Versalまでの広い製品群 | 用途によってASICやGPUとのコスト競争 |
| AMD CPU・GPUとの組み合わせ | 買収後のソフトウェア・販売体制の統合 |
| 通信、車載、産業、航空宇宙での長期採用 | 組み込み市場の在庫・設備投資サイクル |
まとめ
- Xilinxは2022年2月にAMDが買収し、独立上場企業ではなくなった
- 旧証券コードXLNXは上場廃止で、単独株価や単独決算は存在しない
- Artix、Kintex、Virtex、Spartan、Zynq、VersalはAMD製品として継続
- VersalはCPU、FPGA、DSP、AI Engineなどを統合したAdaptive SoC
- 2026年第1四半期のAMD Embedded売上高は前年同期比6%増
Xilinxの現在を理解するには、過去のFPGA専業企業としてではなく、AMDのCPU・GPUと連携するAdaptive Computing事業として見ることが重要です。

ご覧いただきありがとうございます。
よろしければ、シェアお願いします。

