Broadcom(ブロードコム)は、AIデータセンター向けネットワーク半導体やカスタムAIチップ、スマートフォン向け通信部品を設計する米国企業です。VMware買収後は、半導体だけでなくインフラソフトウェアも大きな収益源になっています。
会計上は「半導体ソリューション」と「インフラソフトウェア」の2事業です。AIデータセンターとの関係は、①AIネットワーク、②カスタムAI ASIC/XPU、③VMware Cloud Foundationという3つの役割に分けると理解しやすくなります。
Broadcom(AVGO)は何の会社?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | Broadcom Inc. |
| 本社 | 米国カリフォルニア州パロアルト |
| CEO | ホック・E・タン |
| 上場市場・証券コード | NASDAQ:AVGO |
| 従業員数 | 約33,000人(2025年11月2日時点) |
| 報告セグメント | 半導体ソリューション/インフラソフトウェア |
| 代表的な製品・事業 | AIネットワーク、カスタムAI ASIC・XPU、無線通信部品、VMware Cloud Foundation |
Broadcomの技術的なルーツには、AT&T/Bell Labs、Lucent、Hewlett-Packardの半導体事業などがあります。現在の企業は、Avago Technologiesが2016年にBroadcom Corporationを買収してBroadcomの社名を採用したことで形成されました。株式ティッカー「AVGO」はAvago時代から引き継がれています。
半導体とインフラソフトウェアの事業構成
Broadcomの2025年度売上高は638.87億ドルでした。半導体ソリューションが58%、インフラソフトウェアが42%を占めます。VMware買収以前と比べ、ソフトウェアの比重が大幅に高まりました。
- 半導体ソリューション:AIデータセンター、ネットワーク、サーバー、ストレージ、ブロードバンド、無線通信、産業機器向け
- インフラソフトウェア:VMwareを中心とするプライベートクラウド、メインフレーム、サイバーセキュリティ、企業向けソフトウェア
AIデータセンターを支える3つの柱
1. AIネットワーク
AIモデルの学習や推論では、多数のアクセラレータ間で大量のデータを高速に移動させる必要があります。BroadcomはEthernetスイッチ、ルーター向けシリコン、NIC、PHY、光通信部品を提供し、AIデータセンターのネットワーク部分を支えています。
2. カスタムAI ASIC/XPU
Broadcomは、大手クラウド事業者などの仕様に合わせたカスタムAIアクセラレータを設計します。汎用GPUをそのまま販売する事業とは異なり、顧客ごとの計算処理、メモリー、通信、消費電力の要件を組み合わせることが特徴です。
3. VMware Cloud Foundation
VMware Cloud Foundation(VCF)は、コンピュート、ネットワーク、ストレージ、管理、セキュリティを統合するプライベートクラウド基盤です。仮想マシンやコンテナに加え、企業内のAIワークロードにも対応します。VMwareは半導体事業ではなく、インフラソフトウェア部門からBroadcomのデータセンター戦略を支えています。
Broadcomの主力製品
AI関連以外にも、スマートフォン向けRFフロントエンド、FBARフィルター、Wi-Fi/Bluetooth部品、ストレージ接続、ブロードバンド、産業機器向け半導体を展開しています。製品群と用途の詳しい説明は「Broadcomの主要製品」で解説しています。
直近3年の業績
Broadcomの2025年度は2025年11月2日に終了した会計年度です。以下は公式Form 10-Kに基づくセグメント売上高です(単位:十億米ドル)。
| 項目 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 35.8 | 51.6 | 63.9 |
| 半導体ソリューション | 28.2 | 30.1 | 36.9 |
| インフラソフトウェア | 7.6 | 21.5 | 27.0 |
| 半導体の構成比 | 79% | 58% | 58% |
| インフラソフトウェアの構成比 | 21% | 42% | 42% |
2025年度は、カスタムAIアクセラレータとAIネットワーク製品が半導体部門の成長を押し上げました。ソフトウェア部門では、VMware Cloud Foundationの需要とサブスクリプションモデルへの移行が寄与しています。
Broadcomの製造体制
Broadcomは外部委託を中心とする製造モデルです。先端CMOSのウェハ製造や組立・テストの大部分を外部のファウンドリーや委託先に任せています。一方、FBARフィルターや光通信用レーザーなど、独自工程が重要な一部製品では自社設備も使用します。そのため「完全なファブレス」ではなく、「外部委託が中心で、一部に自社製造設備を持つ」と表現するのが正確です。
TSMCなどの委託先と自社拠点については「Broadcomの製造拠点」で詳しく説明しています。
BroadcomのM&Aと競合
Broadcomは、AvagoによるBroadcom Corporationの買収、Brocade、CA Technologies、Symantecの法人向けセキュリティ事業、VMwareなどの買収を通じて事業を拡大しました。買収の時系列と狙いは「Broadcomの合併・買収戦略」に分けています。
競合企業は製品分野によって異なります。AIネットワーク、無線通信、ストレージ、企業向けソフトウェアを一括して比較するのではなく、各市場で競争相手を分けて見る必要があります。詳しくは「Broadcomの競合他社」をご覧ください。
Broadcomの強みと注意点
- 強み:AIネットワークとカスタムASICの両方を持ち、顧客と長期間共同開発できる
- 強み:VMwareを含むソフトウェア収益が加わり、半導体市況だけに依存しない
- 注意点:上位顧客への売上集中度が高く、大口顧客の投資計画に業績が左右されやすい
- 注意点:先端半導体の外部委託先が限られ、供給・地政学リスクの影響を受ける
- 注意点:VMwareのライセンス・販売モデル変更が顧客維持に与える影響を確認する必要がある
よくある質問
Broadcomは自社工場を持っていますか?
はい。一部の独自製品向けに自社製造設備を持っています。ただし、ウェハ製造と組立・テストの大部分は外部委託です。
AvagoとBroadcomの関係は?
Avago Technologiesが2016年にBroadcom Corporationを買収し、統合後の社名をBroadcomにしました。AVGOというティッカーはAvago時代の名残です。
株式情報(AVGO)
BroadcomはNASDAQに上場し、証券コードは「AVGO」です。株価を見るときは、AI半導体売上、VMwareを含むソフトウェア成長率、主要顧客への集中度、研究開発投資をあわせて確認する必要があります。
まとめ
Broadcomは、半導体とインフラソフトウェアを両方持つ米国企業です。AIデータセンターでは、ネットワーク製品とカスタムAI ASICが半導体側を、VMware Cloud Foundationがソフトウェア側を支えています。Broadcomを理解するポイントは、従来の通信半導体企業ではなく、AIインフラと企業ITソフトウェアを組み合わせた複合企業へ変化したことです。
出典:Broadcom Inc. Annual Report on Form 10-K for fiscal year 2025、Broadcom公式発表。数値は2025年11月2日終了の会計年度を基準としています。

