通富微電(TFME:TongFu Microelectronics、深圳証券取引所:002156)は、中国を代表する半導体後工程企業です。半導体を設計・製造する企業からチップを受け取り、パッケージングとテストを行うOSAT(半導体組立・検査受託)を主力事業としています。
TFMEの特徴は、従来型パッケージだけでなく、CPUやGPUなどに使うFCBGA、ウェーハレベルパッケージ、Fan-Out、SiP、Chipletといった先端パッケージに対応していることです。AMDとは資本・技術面で深い関係があり、蘇州とマレーシア・ペナンの拠点で高性能プロセッサ向けの封止・テストを手掛けています。
この記事で分かること
- TFMEがどの工程を担当する半導体企業なのか
- AMDとの資本・事業関係
- FCBGAやChipletなどの主なパッケージ技術
- 中国とマレーシアに展開する製造拠点
- 2023~2025年の業績と成長材料
- 投資や事業を見るうえで注意したいリスク
TFMEは半導体の「後工程」を担う企業
半導体の製造は、シリコンウェーハ上に回路を形成する前工程と、チップを切り出して保護・接続し、動作を検査する後工程に大きく分かれます。TFMEが主に担当するのは後工程です。
同社はパッケージングとテストだけでなく、設計シミュレーション、ウェーハテスト、完成品テスト、システムレベルテストまでを一貫して提供しています。対象市場はAI、高性能コンピューティング(HPC)、データストレージ、ネットワーク通信、スマートフォン、車載、IoT、産業機器などです。
2025年の売上高のうち、集積回路の封止・テスト事業は97.59%を占めました。TFMEは実質的に、半導体後工程を中心とする専業企業といえます。
企業概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 通富微電子股份有限公司 |
| 英文名 | TongFu Microelectronics Co., Ltd. |
| 略称 | TFME、通富微電 |
| 本社 | 中国・江蘇省南通市崇川路288号 |
| 設立 | 1997年 |
| 董事長・総裁 | 石磊(Shi Lei) |
| 上場市場 | 深圳証券取引所 |
| 証券コード | 002156 |
| 連結従業員数 | 25,446人(2025年末) |
| 主力事業 | 集積回路のパッケージング・テスト |
従業員25,446人のうち、技術人員は8,338人です。製造規模だけでなく、パッケージ設計やテスト開発を担う技術者を多く抱えている点も特徴です。
AMDとの関係
TFMEとAMDの関係は、単なる顧客と委託先にとどまりません。
2015年、TFMEはAMDが保有していた中国・蘇州とマレーシア・ペナンの封止テスト事業について、それぞれ85%の持分を取得する契約を締結しました。取引は2016年に完了し、現在は通富超威蘇州と通富超威ペナンとしてグループの主要拠点になっています。取引の経緯はTFMEの公式発表で確認できます。
両拠点はCPU、GPU、APU、ゲーム機向けチップなど、高性能プロセッサのパッケージングとテストを担当します。採用技術にはFCBGA、FCPGA、FCLGA、MCMなどが含まれます。
この提携により、TFMEはAMD向けの生産を取り込みながら、高性能プロセッサ向けのフリップチップ技術や品質管理の知見を蓄積しました。TFMEにとってAMDは現在も重要な顧客・提携先ですが、最新の顧客別売上比率は公開資料で明示されていません。そのため、過去の比率を現在の売上構成として扱うことはできません。
主なパッケージ技術
FCBGA・フリップチップ
FCBGAは、チップの電極をバンプで基板へ直接接続するパッケージです。ワイヤ接続よりも多数の入出力端子を設けやすく、電気特性と放熱性を高められるため、CPU、GPU、サーバー、ネットワーク機器などに使われます。
TFMEのFCBGA公式製品情報では、5nm世代のチップ、最大100mmの基板、最大13個のダイを搭載するMCMに対応するとしています。
ウェーハレベル・Fan-Out・SiP
TFMEはWLCSPなどのウェーハレベルパッケージ、Fan-Out、SiPにも対応しています。これらはパッケージの小型化、高密度化、複数機能の統合に使われ、スマートフォン、通信機器、センサー、車載機器などで採用されます。
Chipletと高密度実装
Chipletは、機能別に分けた複数の小さなチップを1つのパッケージへ統合する設計手法です。最先端プロセスだけに依存せず、異なる製造プロセスのチップを組み合わせられるため、性能、コスト、歩留まりのバランスを取りやすくなります。
TFMEはFan-Out、ウェーハレベル、フリップチップの能力増強に加え、Chipletや「2D+」と呼ぶ高密度パッケージ技術を重点分野に位置付けています。南通では、高帯域メモリ向けChipletの先端パッケージ能力増強計画も進めています。
対応する市場
| 市場 | 主な用途 |
|---|---|
| AI・HPC | CPU、GPU、AIアクセラレーター、高性能サーバー |
| データストレージ | メモリ、ストレージコントローラー |
| ネットワーク通信 | 5G、基地局、ネットワークプロセッサー |
| モバイル・民生 | スマートフォン、ディスプレイドライバー、無線通信 |
| 車載 | MCU、パワー半導体、センサー、車載通信 |
| IoT・産業 | センサー、制御IC、産業用コンピューティング |
幅広い用途へ対応することで、スマートフォンやPCなど特定市場の変動をある程度分散できます。一方、AI・HPC向けの先端パッケージは、今後の成長性と収益性を左右する重要分野です。
製造拠点
TFMEは中国国内とマレーシアに生産拠点を展開しています。
| 地域 | 主な位置付け |
|---|---|
| 江蘇省南通市・崇川 | 本社、パッケージング・テスト |
| 江蘇省南通市・蘇通科技産業園 | 生産能力の拡張拠点 |
| 江蘇省南通市・市北高新区 | 通富通達の先端パッケージ拠点 |
| 安徽省合肥市 | 集積回路パッケージング・テスト |
| 福建省厦門市 | 先端パッケージング・テスト |
| 江蘇省蘇州市 | AMD系の高性能プロセッサ向け拠点 |
| マレーシア・ペナン | AMD系の海外パッケージング・テスト拠点 |
2025年の中国国外売上は185.94億元で、全売上高の66.59%を占めました。ペナン拠点を含む海外事業とグローバル顧客の比重が高い企業です。
2025年業績
| 指標 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2025年の前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 222.69億元 | 238.82億元 | 279.21億元 | 16.92%増 |
| 親会社株主帰属純利益 | 1.69億元 | 6.78億元 | 12.19億元 | 79.86%増 |
| 営業キャッシュフロー | 42.93億元 | 38.77億元 | 69.66億元 | 79.66%増 |
| 総資産(期末) | 348.78億元 | 393.40億元 | 472.66億元 | 20.15%増 |
2025年は売上高と利益がともに増加し、純利益の伸びが売上高の伸びを上回りました。営業キャッシュフローも前年比79.66%増の69.66億元となっています。数値はTFMEの2025年年次報告書に基づきます。
ただし、2023年から2025年までの3年間だけでも利益変動は大きく、半導体需要、設備稼働率、製品構成によって業績が変動しやすい点には注意が必要です。
成長材料
AI・HPC向け先端パッケージ
AIサーバーでは、CPU、GPU、アクセラレーター、HBMなどを高密度に接続する技術が重要です。TFMEが強化するFCBGA、Fan-Out、Chiplet、高密度実装は、この需要拡大と直接関係します。
AMD製品の成長
蘇州とペナンの拠点は、AMDとの提携を通じて高性能プロセッサ向けの技術と生産能力を蓄積してきました。AMDのCPU・GPU・データセンター製品が拡大すれば、TFMEの封止・テスト需要にも追い風となる可能性があります。
中国での半導体後工程投資
中国では半導体サプライチェーンの国内強化が続いています。前工程に比べて成熟プロセスとの組み合わせがしやすいChipletや先端パッケージは、中国企業が競争力を高めやすい分野の1つです。
主なリスク
大口顧客への依存
AMDはTFMEにとって重要な顧客・提携先です。AMD製品の需要、生産計画、外部委託方針が変化した場合、蘇州・ペナン拠点の稼働率や業績へ影響する可能性があります。顧客別売上比率が最新資料で明示されていないため、依存度は断定せず継続確認が必要です。
大規模な設備投資
先端パッケージは、高価な製造・検査装置と継続的な研究開発を必要とします。需要が想定を下回れば、減価償却費や固定費が利益を圧迫します。
米中関係と輸出規制
TFMEは中国国外売上の比率が高く、米国企業との取引や海外拠点も持っています。半導体の輸出規制、関税、技術移転規制、顧客のサプライチェーン見直しは事業上のリスクです。
OSAT市場の競争
先端パッケージでは、ASE Technology、Amkor Technology、JCETなどの大手OSATに加え、ファウンドリーやIDMも能力を拡張しています。TFMEには技術開発だけでなく、歩留まり、品質、納期、コストでの継続的な競争力が求められます。
株式情報
TFMEは深圳証券取引所に上場しており、証券コードは002156です。中国本土上場株のため、日本から利用できる証券会社や取引条件は限られます。
株価だけでなく、次の指標をあわせて確認することが重要です。
- AI・HPC向け先端パッケージの売上拡大
- 蘇州・ペナン拠点の稼働状況
- 売上高総利益率と営業利益率
- 設備投資額と営業キャッシュフロー
- 中国国外売上比率
- 顧客構成の変化
よくある質問
TFMEは半導体を設計する会社ですか?
主力事業は半導体の設計ではなく、パッケージングとテストです。顧客が設計・製造したチップを受け取り、外部端子との接続、保護、検査などの後工程を担当します。
TFMEはAMDの子会社ですか?
TFME自体はAMDの子会社ではありません。TFMEが、旧AMDの蘇州・ペナン封止テスト事業の各85%を取得し、AMDと共同で運営する関係です。
TFMEの強みは何ですか?
従来型パッケージからFCBGA、ウェーハレベル、Fan-Out、SiP、Chipletまで幅広く対応できること、AMDとの提携を通じて高性能プロセッサ向けの量産経験を持つこと、中国とマレーシアに大規模な生産基盤を持つことです。
まとめ
TFMEは、中国を代表する半導体後工程企業です。AMDとの提携を通じてCPU・GPU向けの先端パッケージ技術を蓄積し、現在はAI、HPC、データストレージ、車載など幅広い市場へ事業を展開しています。
2025年は売上高279.21億元、親会社株主帰属純利益12.19億元と増収増益になりました。今後はFCBGA、Fan-Out、Chiplet、高帯域メモリ関連の能力増強が成長の焦点です。一方で、大口顧客、設備投資、米中規制、OSAT市場の競争には注意が必要です。
数値と事業情報は、TFMEの2025年年次報告書および公式サイトを2026年7月28日に確認した内容に基づきます。

